お手軽・カンタンeラーニングの方法

社内メルマガでeラーニング

今では、ほとんどの企業で電子メールが使われていると思います。このメールを使ったeラーニングのやり方をご紹介します。

具体的には、社内向けのメールマガジンを発行して学習してもらいます。電子メールは使用量が増えてもほとんどコストアップにならない契約になっているでしょう。逆に使わなくても費用は発生していますので、どんどん活用しましょう。

イメージしていただきやすいように、事例で確認していただこうと思います。

私がメーカーの情報システム部門に在籍していたときに、実際にやっていた方法です。

ITリテラシーの向上を目指す

その当時、私は情報セキュリティとIT資産の管理を統括していました。それ以前は営業とマーケティング部門に長くいたので、営業のITリテラシーを高める必要性を痛感していました。

社内には活用すれば業務の効率化につながったり、販促活動に役立つシステムや情報が多くありました。しかし最低限必要なパソコン操作しかできない営業担当者も多く、レベルアップを図る方法を考えていました。

初歩的な問い合わせをヘルプデスクに何度も聞いてくる人もいたので、グループ会社も含め、全体の底上げ実現を目指しました。

情報を掲示するだけでは意識しない

ヘルプデスクへの問い合わせが多いため、受け付けた内容はFAQとして社内のイントラネットにアップし、閲覧できるようになっていました。ところが、FAQを確認をせずに電話をかけてくる人が後を絶ちません。

FAQの存在そのものを知らない人もいれば、どうやって探せばいいのかわからない人もいます。求める情報がどこにあるのかをわかりやすくするために、ヘルプデスクの人にお願いしてITのページを一から作り直すことにしました。

せっかくわかりやすいページを作ってもらっても、利用促進の働きかけをしないことには前に進みません。そこで、社内向けのメールマガジンを発行し、意識を向けてもらう作戦に出ました。

知らないモノは使えない 伝えても伝わらない

社内にある資産が有効に活用されない第一の理由として、「存在を知らない」ことがあげられます。当然「知らないモノは使えない」ことになります。

「知らないのだったら、告知すればいい」ということで社内発信されますが、活用度はそれほど高まりません。一度や二度くらい発信しても、情報は伝わらないものなのです。

よく「全社にメールで発信しています」というようなことを耳にしますが、よほど受信者に影響を及ぼす内容でなければ、メールの内容を覚えていないと理解すべきです。ただメールを開封するだけの人もいれば、開封さえしない人もいます。

こういうことを認識した上で、どうやっていくかを考えなければいけません。

メールマガジンの存在を認知してもらう方法

メールというのは便利なツールで、何千人もの人に一瞬でメール送信できてしまいます。eラーニングとして発信するメールマガジンも全員に送れば効率的に見えますが、そうしませんでした。

意識の高くない人にまでメルマガを送ってしまうと、受信する度にわずらわしく思われる可能性があるからです。一度拒否反応がでてしまうと、なかなか改善はできなくなります。

そこでメルマガを送信する対象者を、各部門にいる「IT管理者」の人にしぼりました。彼らは自部門のパソコンの管理やITツールの導入・活用を推進する役割を担っています。

メルマガの送付は彼らにしましたが、「役立つ内容と思われるものは、ぜひ部門のみなさんへ転送してください」と一文を添えました。

機転のきくIT管理者は、自部門での活用ポイントなどを一言加えて転送してくれていました。やはり、現場に一番近い人に推進してもらうのが、効果的です。

一方で、まったく転送されないことを想定し、たまに全社員にメルマガを送信していました。

「通常はIT管理者の方から転送されていると思いますが、今回は全社員の方に送信させていただいています。次回以降も配信を希望される方は連絡ください」

この一文をメルマガを冒頭にいれておけば、まったく転送されていない部門があったとしても、希望者に配信することができます。また、IT管理者への意識づけにもなります。

メルマガタイトルに”しゅうかん”を入れた理由

情報システムなどには、よく「受発注システム」、「見積りシステム」、「営業支援システム」などと”一般名称”が使われていることがあります。社内メルマガを創刊するにあたり、固有名詞をつけるべきだと最初から考えていました。

”名前”があるとユーザーにもわかりやすいですし、われわれ運営側も思い入れが強くなります。名称はひかえさせてもらいますが、タイトルのあたまに”しゅうかん”という文字を採用しました。

これは、メルマガeラーニングを”習慣”にして欲しいとの願いと、”週刊”で発行しますとの宣言の意味がこもっています。

教育は継続的にやってこそ、成果がでてくるものです。そこで、毎週欠かさずメルマガを発刊することを宣言して、われわれ自身の逃げ道をなくしたのです。

メルマガ55号発行まではやめない宣言

ビジネスでは仮説・検証が大事ですが、検証不十分なままフェードアウトしていくプロジェクトがよくあります。ある程度の数と量をこなさないことには、良否の判断をくだす基準がわかりません。

メルマガによるeラーニングも数回で終わっていては何もわからないままです。そこで発行を担当する部下にこう宣言しました。「メルマガを始める限りは一定期間は継続する。目標は55号クリアで約1年強。それまでは一週も欠かさないから」

巨人ファンで松井選手が好きな部下に、わかりやすい目標として背番号にちなんだ55号においたのです。55号までの発行をスケジュールに落としました。

メールマガジンに”人”を感じてもらう

社内メルマガを出すことはあくまで方法であって、目的は社員のITリテラシーを高め、会社の業績を向上させることです。

その第一歩として、ユーザーである社員がメルマガに対して関心をもつようなしかけが必要でした。ただ単にシステムの説明をしたり、パソコンの使い方を紹介してもあきられてしまいます。

人間味を感じてもらうことが重要だと考え、毎回「編集後記」として、部下が近況報告をしていました。また、システムを紹介するときには、開発担当者の裏話などをインタビュー形式で掲載したりもしました。

ユーザー(社員)に役立つメルマガをめざす

メルマガのコンテンツは編集担当者がヘルプデスクへの問い合わせ履歴を確認したり、雑誌・書籍、インターネットから情報を取得した上で、わかりやすく解説していきました。

しばらくすると、編集担当者あてにメールや社内電話で「活用させてもらってます」、「メルマガ楽しみにしてます」、「発行、がんばってください」などの感謝や激励の連絡がくるようになりました。

これは担当者本人のモチベーションも高まるできごとでした。発行回数を重ねていくうちに、メルマガの内容をコピーし、紙に出力して活用してくれる人も現れました。メルマガが役に立つということが、自然と広まってゆき、精読してくれる人が増えていきました。

メルマガで情報を伝えやすくなった

社内メルマガの認知が高まるにしたがい、情報伝達手段としても活用しやすくなりました。

新システムのカットオーバーやソフトウェアのバージョンアップ、パソコンの入れ替えなど、業務連絡的なことも伝わりやすくなりました。

途中でメルマガから社内ブログへ切り替えたのですが、発行の案内はメールで発信し、リンクをクリックしてブログを見てもらうように考えました。


メールで送れば”気づいてもらえる”という大きなメリットがあります。ブログを毎週更新するだけでは、見忘れもでてきます。

コンテンツは財産として残る

担当が苦労してつくったコンテンツは、一度発信したら消えるわけではありません。ずっとサーバー上にありますから、新入社員が入ってきても活用できます。

メールという、すぐに使えるツールで効果的なeラーニングが実現可能なのです。ぜひ、あなたの会社でもチャレンジしてみてください。

ポイントはユーザー(社員)のためになることを考え、継続的に実施することです。