不意を突き、目をテンにする

マネージャーの一番の役割は、部下の成長をサポートすることです。素質があっても、上司によって成長できない部下はたくさんいます。 上司が替わると、たちまちやる気に満ちあふれ、仕事で成果を出すことはよくあることです。同じ人物かと思うくらいに、モチベーションは人の行動を大きく左右するものです。

人間ですから、どんなに優秀な人材でも、気持ちが高まらないこともあれば、仕事が順調なときに、つい油断してしまうことも出てきます。 そんなときにこそ、マネージャーは部下に対して、「良い緊張感」を持たさなければなりません。

担当者は、上司から突っ込まれそうなことをある程度想定しているものです。 営業なら、「今月の新商品の受注はどれくらいいく?」と聞かれれば、「価格的に厳しくて、見込みは○○くらいになりそうです」などと”言い訳”も含めて返事をします。 スタッフの場合は、「例の企画書はもうできたか?」とたずねられたら、「あと1、2か所データの裏付けが確認できたら、一度、見て頂けますか」と逆に問いかけ直して、返答をぼやかしたりします。

”今、取り組んでいる仕事”のことは当然、誰でも十分意識しています。 そこをことさら強調して、担当者にあれこれ指示を出す必要性はそれほどありません。 それよりも、”忘れがちなこと”に関して質問を繰り返す方が、能力アップにつながります。

人の記憶というものは、新しいものがどんどん上書きされて、古いそれは薄れてゆく運命にあります。 さらに”使用頻度”が少ないと、頭の中からすっぽりと抜け去ってしまいます。 仕事に必要な基本的なことも、案外曖昧に覚えているだけというケースも少なくありません。 こういう現状があるので、マネージャーは事ある毎に、不意を突いた質問を担当者に投げかけましょう。

住宅設備機器メーカーにいた頃、

「電気代って1kWいくら?」

「1間は何mm?」

「キッチンの高さは何cm?」

「全社の去年の売上は?」

「競合他社の品番と価格は?」

「13A(天然ガス)の発熱量は?」

「○○工務店はどこのメーカーを採用?」

といった短い質問をよく担当者にしていました。

即答出来ないといって、ネチネチと詰問するようなことはしません。 何も言わずにその話題は終了します。

「所長からどんな質問が飛んでくるかわからないから、準備しておこう」

そう担当者が意識をしてくれることが狙いだったからです。

即答できたときには、「よう知ってるな」、「勉強してたんや」、「意識高いな」と、ひと言添えることを心がけていました。

やったことに対して、 何らかの”反応”があることは、やりがいにつながります。 こちらが思っている以上に、担当者が広く深く”準備”していることもあり、 能力開発と人材育成には有効な方法だと実感したものです。

あなたの部門でも、一度チャレンジしてみてください。

2011.10.11